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過去の法話

 

仏の願い、私の願い(7月上旬)

水仙

【七夕】

 

今年も七夕の時期です。

 

「にっしょう認定こども園」は、
ほぼ一ヶ月前から少しずつ子どもたちが七夕飾りを作っていました。
なれないハサミやノリを練習しながら、
あみかざり、星、ひしがたかいだん、貝かざり、ちょうちん、
一つ一つかわいい飾りができていきます。

 

そして最後に短冊に願い事を書きました。

 

「アンパンマンにあえますように」(ひまり)
「さかあがりができるようになりますように」(みうる)

 

今年は先生方も願い事を書きました。

 

「カープ優勝!」
「まいにちがたのしくすごせますように」

 

後日、七月の子ども会で「みんなの願い事は?」とたずねてみました。

 

「絵が上手になりたい」
「永遠に生きていたい」
「権力がほしい」
子供らしくない願い(、ていうか欲望)もずいぶんと飛び交いました。

 

私も短冊に書きました。
「みんながののさまをずっと すきでいてくれますように。」

 

【他力の願い】

 

人間は願いをもち、それに向って歩む生き物です。
願いがないのはさびしいものです。

 

浄土真宗の教えの中心は「願い」です。
そしてそれは「阿弥陀さまの願い」を指します。
「他力本願」といいます。

 

自分が願いをもって前にすすんでいくように、
仏さまも願いをもってはたらいておられます。

 

仏さまは何を願い、
阿弥陀さまは何を願われたか。

 

「この苦悩をどうか……」と切望する私ですが、
お仏壇の前に座る時、
「その苦悩をどうにかして」と願われるお心を聞きます。

 

聞いて知らされる凡夫のわが身です。
仏と真反対の人生を歩むわが身を、
仏は真正面から受けとめておられます。

 

結論、何も願い求める必要もない今がありました。
如来のお慈悲の功徳、
「恩徳(おんどく)」で一杯の今でした。

 

【回向文】

 

願以之功徳 (がんにしくどく)
平等施一切 (びょうどうせいっさい)
同発菩提心 (どうほつぼだいしん)
往生安楽国 (おうじょうあんらっこく)

 

(書き下し)
「願わくは、この[阿弥陀様の]功徳をもって、
平等に一切に施し、
同じく菩提心(信心のこと)を発して、
安楽国に往生せん。」

 

読経の最後の四句、「回向文(えこうもん)」といいます。

 

如来さまの救いにであい、
何も願う必要のない私ですが、
だからこそ、
「お浄土に生まれたい」
「みなと一緒に生まれたい」
ある意味、「願い」をもちます。

 

「できれば生まれたい」という淡い期待ではありません。
「何としても生まれさせたい」と願い、
「必ずそうしてみせる」と功徳をふりむけられる仏さま、
そのお心・お仕事ぶりにこたえたいのです。
その心持ちが、「生まれたい」です。

 

人生の半ばがすぎ、「後生の一大事」が重みを増してくる昨今。
お勤めの最後に、
如来さまの回向のお心を喜び、
一緒にお浄土に生まれたいと願うことです。

 

(……え、そうは思いませんか?
どれだけお聴聞をしても参りたいと思えない?
ようこそおっしゃってくださいました。
憲法第九条、ではなく『歎異抄』第九条を「検索」、読んでみてください。)

 

【おまけ「願心土」】

 

七夕がおわり、まもなくお盆参りが始まります。

 

娑婆は別名「堪忍土(かんにんど)」といいます。
ここは四苦八苦うずまく堪忍の世界です。
心は悲しみや苦しみ、悩みや不安に堪え、
体は寒さ・暑さ・災害等に耐え忍ばなければなりません。

 

年々暑くなるお盆の時期。
お参りに向かいながら、汗ばむ身体。
堪忍土を身をもって知らされます。

 

しかし家に入ると、
そこには七夕飾りのようにきれいに飾られたお仏壇があります。
七夕飾りには一つ一ついろんな願いがこめられているように、
お仏壇のお飾りにも仏さまの願いがこめられています。
家の方が飾りましたが、
できたのはお浄土の荘厳、
仏さまの願いでできあがったお浄土の様子です。
願心荘厳(がんしんしょうごん)といい、
故にお浄土を「願土(がんど)」とも言います。

 

そして阿弥陀さまの願いは、
この娑婆にいる私にもいたり届いています。
第十八願のご本願、
「お前を救う事ができなければ私は仏とはならない」。
お浄土にこの私を生まれさせなければお浄土を開いた意味がない、
そうおっしゃる仏さま。
お浄土を開かれたのは他ならぬ私のため、
そんな願いを聞くのがお念仏です。

 

堪え忍ぶ事多き世界という意味でこの世は「堪忍土(かんにんど)」です。
しかしお念仏にであう時、
この世は如来の願い心一杯の世界という意味で「願心土(がんしんど)」、
そのように呼ばせていただきます。

 

娑婆の堪忍土を肌で感じつつ、
同じく願心土を喜ばせていただく、
そんなお盆の季節です。

 

(おわり)


 

 
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