山口県は岩国にある浄土真宗寺院のWebサイト

過去の法話

 

ピカソと念仏(5月上旬)

水仙

【ひろしま美術館】

 

今年2月、13回目の結婚記念日に、
夫婦で広島へ食事へ行きました。

 

食事前に、奥様はデパートで買い物、
私は病院へ定期検診へ。

 

検診が思ったより早く終わり、
待ち合わせの時間まで半時間。
ふと、先日テレビで紹介していた、
「ひろしま美術館」を訪ねてみました。

 

「ひろしま美術館」のテーマは“愛とやすらぎのために”。
原爆の惨劇からの復興を願い、
気軽に本物の“美”を鑑賞してもらいたいと、
分かりやすく親しみやすい絵画が展示されてあります。

 

第1展示室のモネ、
第2展示室のゴッホ等、
どれもその画家らしい絵ばかりです。
噂に聞くゴッホの『ドービニーの庭』は感動しました。

 

さて第3展示室、
そこにはピカソの絵画が。
20世紀芸術最大の巨匠です。

 

【ピカソ】

 

こんな小咄があります。

 

ある女性が画廊へ来ました。
「これ、ゴッホね!」
「いいえ奥様、ユトリロでございます。」
「……じゃあ、これもユトリロね。」
「いいえ奥様、ゴッホでございます。」
「そう………これなら分かるわ。ピカソでしょ!」
「いいえ奥様、鏡でございます」

 

……第3展示室には、
ピカソの「女の半身像」という名の絵画が二点ありました。
いかにもピカソらしい絵。
一見すると、一方はゴツゴツした感じ。
もう一方は、もう女性というより……一つ目小僧です。

 

思い出すのは子供の頃、
わが家の洗面室の壁には、
ピカソの「ドラ・マールの肖像」が掛けてありました。
その絵を見るたびにいつも思うのは、
「変な絵だな。」

 

顔が変です。
顔の半分は正面からですが、
もう半分は真横からのアングル。
不細工です。

 

「こんな絵なら、子供でも描ける。」

 

なんでこんな絵が何億円もするのか。

 

しかし今は違います。
キュビズムという言葉を知りました。
日本語にすると「立体派」。

 

普通、絵画は一つの方向の視点から描かれています。
しかしキュビズムは様々な角度から見た物の形を一つの画面に収めます。
多視点。
それによって対象の魅力を最大限引き出します。
ルネサンス以来の遠近法をあえて否定した理知的な画法です。

 

美術史上、形からの開放に成功したキュビズム。
人間の美しさの大転換を行いました。
キュビズムの話を聞いた今、
ピカソの値打ち、少し分かるような気がします。

 

【あらゆる角度】

 

「ナモアミダブツ」のお念仏。
何も知らずに大人になった時、
ふと「子供でも簡単な行に、何の意味が?」
と思う私がいます。

 

しかし仏教の歴史、
そして親鸞聖人の教えを聴聞する中で、
「他力」という言葉の本当の意味を知りました。

 

親鸞作、「正信念仏偈(しょうしんねんぶつげ)」には、

法蔵菩薩因位の時、
世自在王仏の所にましまして、
諸仏浄土の因、
国土人天の善悪を覩見(とけん)し…

という箇所があります。
あらゆる角度から、
私の正体をじっと見つめられた法蔵菩薩、
後の阿弥陀さまがおられますというのです。

 

他人に公表している部分だけではありません。
秘密にしている過去の事柄。
知らずに犯している悪行。
指摘されても認めたくない罪業。

 

過去の罪、現在の悪、未来の苦しみ。
全てを見尽くした上で誓われたのが弥陀の本願。
結果となってあらわれたのがナモアミダブツの名号。

 

【大転換】

 

念仏にこめられた如来さまの思い。
それは「どのようなあなたであっても救いたい」と、
私たちにふり向け、与えられた如来の真心、
仏心の功徳の結晶です。

 

その心を聞き受けた時、
あらためて念仏は、
どんな子供でもできる簡単な行為ですが、
決して凡夫には真似できない行為と知らされます。
同時に、
「称えたらこんな効果がある」等、
私たち凡夫側の功績を、
一点も混じらせてはならないと思い知らされます。

 

油断すればすぐに「意味がわからない」と、
湧き上がってくるはからい心。
仏の慈悲も幾度となく裁いてきました。
罪の深さは計り知れません。

 

しかし今、
お念仏の値打ちに出遇います。
底知れない罪の側に、
「そんなあなたを救いたい」と、
変わることなく喚び続けておられた方に気づかされます。

 

「罪あるが故に聞こえました。」

 

深い悲しみの中に、
不可思議な仏の憐れみをいただきます。

 

他力の道理かつ真理である“ナモアミダブツ”。
仏教史上、救いのはたらきを鮮明に表しだしました。
人間としての罪業の問題、
苦悩の解決の大転換が、
ナモアミダブツの六字の声なのです。

 

(おわり)

 


 

 
境内案内 内陣 歴史 ◆納骨堂・永代供養墓◆ 地図