山口県は岩国にある浄土真宗寺院のWebサイト

三好達治の詩「慶州仏国寺畔にて」の最初と最後の一連にでてくる言葉です。
何かの拍子に一晩中思い悩み続けた作者が、早朝お寺の境内で聞こえてきた智慧（おさとり）の言葉・仏のささやきです。

「菊根分け（きくねわけ）」は「春先、菊の根を掘り起こすと、親根からいくつもの細根が分かれて芽を出している。その細根についた芽を切り離して植える事」。春の季語です。
「菊根分けあとは自分の土で咲け」。小説家吉川英治さんが知り合いの娘さんの結婚に際して贈った句だそうです。
一人一人、唯一無二のおのれの人生を歩んでいきます。この人生の主人公である私。その人生の芯となるのが阿弥陀さま。
今月末頃から、大輪の花咲き誇る菊花展が始まります。

「昔よりお金が減った」「一日の時間がすごく短い」「気の置けない友人も少なくなった」……と人生を引き算するのではなく、静かにふりかえり思い出してみよう。

「○○との素敵なであいがあった」「□□というかけがえのない体験した」……。生まれてきてから今まで、どれだけ深い経験をしただろうか。そんな「ふりかえりの時間」に出てくるものは感謝しかありません。

「ナモアミダブツ」と如来さまから「いただく」ばかりのお念仏の生活。自然と「人生の合算」が上手になっている自分に驚かされます。

「人力も再生可能エネルギー」、いわれてみればその通りです。自然エネルギーではありませんが。
将来、町のいたる所に「発電モーター付き道路（階段・手すり）」ができるかもしれませんね。
さて、こちらの「じんりき（神力）」は「一般の知識では思いはかることのできない仏のお徳」。『重誓偈』（赤本86頁、朱本81頁）にあります。
今日も町のいたる所で、阿弥陀さまの神力（他力）が私たちの心のモーターを動かし、お念仏を称えさせてくださいます。

高校生の時に右耳の聴力を失った天才少女ピアニストは、世界デビュー目前に、左耳の聴力も失います。その後、少しは回復したものの「ため息ばかりの人生」だったと語るフジ子ヘミングさん。彼女の弾くショパンの「ラ・カンパネラ」には、そんな波瀾万丈の人生の音色が聞こえてくるようです。
「機械じゃないんだから。」感情、心情、激情……情にゆれ動き失敗する私たちです。故に人生をみつめ、様々な仏縁が重なって、ついには如来の温情、南無阿弥陀仏という慈悲の恩情にであえるのかもしれません。
今年４月２１日に亡くなったフジ子ヘミングさん。今月７日が４９日です。

埼玉県入間市（いるまし）の宮入清次郎さんの川柳。
父、母の命をいただいて、今ここにある私。そんな父母もまた、祖父母の命を、さらに祖父母はその親の命をいただいています。
何億という絶えることなく、代々のご先祖の命をいただいて、今ここにあることの有り難さを思わさせていただきます。

生まれたばかりの竹の子もお釈迦さまと同じようになのっている。
「天上天下唯我独尊」と。
世界中に一人しかいない「私」という存在。かけがえのないいのちである。み教えにであわなかったら竹の子にも笑われてしまうかもしれない。

わが父母は、間違いなく生きている。
わが苦悩の中に、
わが苦悩によりそうお慈悲の中に、
わが称える念仏の所に。
「お浄土で待っているぞ」と父母の
われを喚ぶ声　念仏の日々

悲観は自然とわきおこる感情です。「もしも○○になったら、どうしよう」と。
楽観は積極的に起す意志です。「もしも○○になったとしても、心配ない」と。
ネガティブな気持ちからポジティブに考え直せる背景には確かな根拠が必要です。
お念仏はその確かな根拠になり得るものです。

「お念仏をして、阿弥陀様に救われていくのです」という法然聖人の教えを大切に、弟子の親鸞聖人はさらに一歩、あきらかにされました。「ただ念仏するばかり」と。なぜ「ただ」なのか。
　お念仏は救われるための条件ではないからです。
この仏道（浄土真宗）は「お聴聞」が全てです。そして私を離さずにはおれない弥陀のお慈悲の心にであい、故に出てきたお念仏。お念仏は、「こんな私のような罪多き人生に、かえしようのないご恩です。勿体ない事です、なんまんだぶ」、そんな報恩感謝の表明なのです。